積極的思考の力②

 A子は、クラス委員長をやり、部活でも忙しくしていたので、担任の先生は、A子を心配していました。

中2になってから、A子の顔色も悪いことも多くなり、なにかに悩んでいる様子だったので、担任の先生は、A子に声をかけました。

「何か悩んでることでもあるの?成績も落ちてきてるけど。」と聞かれたA子は、その時は、大丈夫です、と、答え、心配してくれた担任の先生にお礼を言って、家に帰りました。

担任の先生は、A子をとても可愛がってくれていたので、クラスの他の友達にも声をかけてみました。

「最近、A子ちゃんの元気もなく、成績も落ちているみたいだけど、何か、クラスで揉めたり、部活で揉めたりしている?」

誰もが首を横にふります。

クラス委員をやり、優等生のA子ではあるけれど、人間関係でもめているようには見えないし、仲の悪いお友達もいるように見えない。A子がクラス委員長をやっていることに友達が不満を言っているような話も聞かない。

担任の先生は、考えます。

どうやら学校が原因ではないんじゃないか、家庭に問題があるのではないか、と。

心配なので、一度、保護者とお話したほうが良いかもしれない、などと、担任の先生が考えていたときに、事件が起こりました。

A子が、学校に登校したら、下駄箱にあったはずのA子の上履きがなくなっていたのです。

担任の先生はあわてました。クラスのみんなで、あちこち探し周りましたが、なかなか見当たりません。

1時間ぐらい探した頃でしょうか、クラスの友達が、上履きを見つけました。

近くのドブに捨てられていたのです。

その後、学級会で話し合いが行われました。心当たりのある人はいるか、と。

誰も名乗り出ません。

実は、A子は友達から妬まれていじめられていたのではないか。

担任の先生は、悩みます。

A子も、突然の出来事に動揺を隠せませんでした。

自分は善意でクラス委員長をしていたつもりだった。部活も勉強も、懸命にがんばってきた。

だけど、こんな仕打ちに合うなんて。

誰が、上履きを隠したんだろう。

涙が自然と頬をつたいます。

A子は担任の先生に言いました。

「どうかお母さんに言わないでください。

心配かけたくないんです。」

涙で声をつまらせるA子を見て、担任の先生は、どうすべきか悩みます。

やはり、保護者とは話し合った方がいいのではないか、

A子はあまりにも、「良い子」でいようとしすぎている。

お母さんに「くるしい」と言えないなんて、なんてつらい境遇なんだ、と。

担任がそんなことを考えていた折、再び、事件が起こります。

今度は、A子の靴の中に、ガビョウが入れられていたのです。

下校時間、友達と帰る時、靴をはこうとしたときに、なにか金属があたったので、思わず「キャッ」と叫びました。

見てみたら靴の中にはガビョウが入っていました。

それをみた友達が、担任の先生に報告します。

いよいよ事態は深刻化してきました。

誰かが、A子に嫌がらせしている。

なんとか、犯人を突き止めねば。

クラスでは、再び話し合いが行われました。

しかし、犯人は、名乗りをあげません。

A子は戸惑うばかりです。

担任の先生も、もう、保護者と面談しないわけにはいかない、ということになり、

A子の母親が呼び出されました。

担任の先生は言います。

「残念ながら、A子ちゃんは、学校で、いじめにあっているようです。

でも、誰が嫌がらせをしているのかはわかりません。

優等生で目立っていたので、妬んで、嫌がらせをする人が現れたのかもしれません。

中2になり、反抗期なので、人間関係も揉めやすい時期です。

解決できるように、きちんとクラス指導していきたいと思います。

申し訳ありません。」

驚いたことに、母親は、次のように答えます。

「いえ、この子にも悪いことがあるのでしょう。お騒がせしてすいません」

普通なら、自分の子供がイジメにあっていたら、母親なら、学校や、いじめた子に怒ります。そして、自分の子供を心配します。

なのに、苛めた子を怒らない。

むしろ、自分の子供の非を責める。

実は、A子の悩みの原因は、母親にあるのではないか。

A子がどんなにいい子でいても、なかなか褒めてあげないお母さんの愛情が欲しくて、A子は悩んでいたのではないか、

そんなことを担任の先生は考えはじめるようになりました。

その後、A子のガビョウ事件の後、二学期になるまで、しばらく、何も起こりませんでした。

やはり、クラスで話し合いになったので、犯人ももう反省してるか、バレるのを怖れて、嫌がらせをやめたのだろうと思われました。

成績はまだ戻らないが、A子の顔色も良くなり、少し元気が戻っできたようにも見えました

ところが、二学期の終わり頃、再び事件が起こります。

今度は、下駄箱に「不幸の手紙」が置かれていたのです。

「死ね」などの悪口が書かれた紙切れですが、

A子は、再びどん底に落とされたような気持ちに沈みます

担任の先生は、筆跡などを調べますが、字が故意に変形されていたので、誰の字かはわかりません。

平和だったうちの学校から、こんな事件が起こってしまうなんて。

担任の先生もショックです。

しかし、学校や、A子の家庭に言わないわけにいきません。

担任の先生も、A子の家庭も、悲しい気持ちで、冬休みを迎えることになりました。

年が明けると、再び、A子から、学校に、連絡が入ります。

なんと、今度は、「死ね」と書かれた年賀状が学校近くのポストから、送られてきた、と、いうのです。

最悪の年明けです。

お正月明けに、担任は、A子と学校で会うことになりました。

A子は、自宅に届いた年賀状(「死ね」と書かれた年賀状)を持って、担任の所にやってきました。

これは、犯人をなんとしても突き止めなくてはいけない、

担任の先生は、渡された年賀状を持って、かたく心に誓いました。

そして、担任が誓った通り、犯人は、突き止められることになりました。

〜続く〜


※このシリーズですが、のんびりと、通勤時間の合間に電車で少しずつ書いていたら、予想以上に、長くなってしまいました。この後、A子は私立中学を中退することになるのですが、彼女が母親とのしがらみを乗り越えて、心身症と向き合う道程を書き始めたら、7月に完結させるのは難しそうです、個人名が特定されないように配慮する必要もあり、どこまで話すか、決めあぐねています。五回ぐらいで完結させたいとは思っているのですが。何らかの形で、夏休み中には完結させたいと思っています、ご了承ください。(←2022年7月当時。すいません、2022年後半は、大変身辺慌ただしく、ブログがなかなか進められませんでした。年度末までには完成させたいと思います 2022.12)


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