かぐや姫のUFOの動力源
忌むといひて 影に当たらぬ 今宵しも 破(わ)れて月見む 名やたちぬらむ
大意 不吉だと言って月食の光を浴びないように人々が月見を避けている今夜こそむしろ、そのしきたりにあらがって、自分は月を見ることとしよう。自分は変わり者だという噂が立ってしまっているだろうか
西行 山家集
11月19日は月食です。
昔の人達は、日食や月食は縁起の悪いものだと考えていて、西行が歌に詠んだように「月食の影(=光)」に当たることを、不吉だと考えていました。(かぐや姫が月に還るのはもちろん望月(満月)です)
現代は天体観測をしたりして、月食の観察を楽しむ時代となりましたが、この天体観測の望遠鏡として、最も遠くの宇宙まで見ることのできる電子望遠鏡「ファスト」が、中国で作られ、アメリカのアレシボ電波望遠鏡技術を抜いて、トップにおどり出たようです。アレシボ電波望遠鏡は、一説には宇宙人と交信するために作られたと言われていて、「謎の」電波を捉えたことなどが報告され、宇宙人の返信ではないか、などと言われていますが、昨年、この電波望遠鏡が老朽化などで、倒壊してしまったようです
ところで、最近、この「月」をめぐって、米中の宇宙開発競争がはじまりつつあるのを、みんなは知っていますか。聞いたことがある人もいるかもしれません。
今、脱炭素で最も効率よく、安定的な電力を供給できるエネルギーは、なんと言っても原子力ですが、日本は被爆国なので、原子力発電には悪いイメージを持つ人も多いと思います。
原子力発電は、火力発電のように二酸化炭素を排出しないので、脱炭素という意味では優れたエネルギーなのですが、放射線漏れなどの事故の危険性や放射性廃棄物の問題があります。
原子力発電は、ウランの「核分裂」を利用したエネルギーですが、これを超えたエネルギーを取り出せる技術として最近、注目をあびているのが、ヘリウムの「核融合」エネルギーです。
ヘリウムの核融合で取り出せるエネルギーは、ウランの核分裂で取り出せる原子力エネルギーに比べて、放射性廃棄物がとても少なくて、かつ、これまでの原子力発電の何倍もの発電量を確保できるので、次世代のエネルギーとしては、かなり期待できるクリーンエネルギーだと思います
この新しい核融合技術を使った新たな産業をはじめようと、アメリカや中国が狙うのが「月」です
月面には、高濃度のヘリウム3があり、ヘリウム3を、核融合技術の燃料にしようと、ヘリウム燃料の採掘のために、中国は、月に基地を建てる計画をたてていて、それに触発されたアメリカも対策を講じようとしています
米中の新たな宇宙技術競争がはじまっています
こういう時代に竹取物語を読むと、なんだか不思議な気分になります
ひょっとしたら、かぐや姫が乗っていた宇宙船は、月面のヘリウム燃料の核融合技術による電力で動いていたのかも、、!?などと、夢想してしまう今日この頃です
日本も、米中に乗り遅れないよう、宇宙関連の産業を成長戦略の一つとして、国家ぐるみで立ち上げて、優秀な技術者を育て、雇用を増やしてみたらどうでしょうか。
政治家は、「パイの分配」にばかり頭を使って、票を取ろうとするのではなく、「新たなパイを焼く」「新たな産業を育てる」という発想をもう少し持てないものでしょうか。
文系の人も理系の人も、ともに活躍できる日本でありますように。
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