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1月, 2021の投稿を表示しています

儒家と法家④

~中国の礼教と魯迅~  残念ながら、孔子の「孝」の思想は、時代を下るにつれ、ゆがめられ狭められ、ところどころで弊害を生み出すようになっていきました。 みんなは「家族」をどう思っていますか? 恵まれた家庭に生まれた人は、家族の存在はかけがえのない宝物に感じることでしょう。けれど、めぐまれない家庭に生まれた人は「どうしてこんな家に生まれてしまったのか」「早く自立して、家族のしがらみから自由になりたい」と思う人だっているでしょう。  10年近い昔、私は、不登校の子どもの世話をする仕事をしていました。その時面倒を見ていた生徒の中には、母親に虐待(ネグレクト)を受けて育ち、食事の習慣すら知らずに育った子もいました。朝ご飯とか昼ご飯とかいう概念がないんですよね。親がそもそも料理をしたことがないので、そういう子には、そもそも「食事の時間」という概念がありません。「お腹がすいた時に、カップラーメンなどを作って食べる」のが、「食事」なんですよね。なので、カップラーメンのような、味の濃いものばかりを食べて育っていたので、味覚障害がひどく、ものすごい量の醤油やソースをかけないと味を感じないんですよね。だから、調味料や香辛料をたくさんかけすぎて、塩分や糖分を取りすぎるので、内蔵にも悪影響を及ぼし、発達にも影響を与えてしまいます。 お弁当を作ってくれたり、料理をしてくれる親がいる、というのは、当たり前のようでいて、実は本当に本当にありがたいことです。 家族の つながりは大切だけど、やはり、この子の家庭のように、家庭環境には差があります。だから、子どもを虐待するような親を 「養え」とか「敬え」とか「従え」という教えは、やっぱり、一部の人にとっては、「苦しい」教えだと思うんですよね。 人には、思想や信条を選ぶ自由があります。特に道徳思想というのは「教養」として学ぶことは大切であっても、それを「画一化」し制度として「義務化」してしまうと、どこかに必ず歪みが生まれます。だから、道徳とか福祉というのは、重要なものではあるけれど、制度化(義務化)してはならない、というのが私の考えです。 ボランティアなどは、もちろん勧めるのは良いことだけど、国のもとに制度化して強制的にやらせるものではないと思います。 ところが、中国では、儒教は、残念ながら、封建制度のしがらみや、窮屈な道徳観念と一緒にな...

儒家と法家③

 ~法律に対する孔子の考えと韓非の考えの相違~  授業でも話しましたが、法家思想の韓非は、儒家を強く批判しています(秦の始皇帝が儒者を数百人生き埋めにしたのは、法家思想の李斯の勧めによります。)が、この「法律」に対する考え方について、孔子と韓非がまるで正反対である、ということをあらわした、こんなエピソードがあります。  ~『論語』より~   〔原文〕葉公語孔子曰、吾党有直躬者。其父攘羊、而子証之。孔子曰、吾党之直者異於是。父為子隠、子為父隠。直在其中矣。   〔書き下し文〕葉公、孔子に語りていはく、「わが党(=村)に直躬(ちょくきゅう)なる者あり。その父羊を攘(ぬす)み、しかして子(こ)、これを証せり。」と。孔子曰く「吾が党の直き者は、是に異なり。父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。直きこと其の中に在り。」と。 〔訳〕(下村湖人訳を主としている) 葉公が得意げに孔子に話した。「私の村に正直者がおりまして、その男の父がどこからか羊が迷い込んできたのを、そのまま自分のものにしていましたところ、かくさずに、それ(父親の盗みについて)を証明したのです」すると孔子が言われた。「私の村の正直者は、それとは趣がちがっております。父は子のためにその罪をかくし子は父のためにその罪をかくしてやるのでございます。私は、そういうところにこそ、人間としてのほんとうの実直さがあるのではないかと存じます。」   そして、この『論語』の「子路篇」に書かれた孔子のエピソードを、後に生きた韓非は次のように著します。 ~韓非子より~ 〔原文〕楚人有直躬。其父窃羊、而謁之吏。令尹曰、之殺。 以為直於君而曲於父、執而罪之。以是観之、夫君直臣 父之暴子也。~中略~上下之利、若是其異也。而人主兼挙匹夫之行、而求到社稷之福、必不幾矣。   〔書き下し文〕 楚人に直躬有り。その父羊を窃み、而して之を吏に謁ぐ。令尹いはく、「之を殺せ」と。以為(おもへ)らく、君に直なれども父に曲なり、執りて之を罪せり。是を以て之を観るに、それ君の直臣は父の暴子なり。上下の利、是くのごとくそれ異なるなり。而るに人主兼ねて匹夫の行ひを挙げて、而も社稷の福を致さんことを求むるも、必ず幾せられざらん。       〔訳〕楚の人に正直者がいた。その父は羊を盗んだので、それを役人に告発した。令尹(葉公を指す)は「この者...

儒家と法家②

 ~「誰が正しいか」 ではなく「何が正しいか」を求める~ さて、前回の続きをかくまえに、一度誤解のないように私の政治的な立場をお話したいと思います。以前お話したことがありますが、私は親戚に中国人がいます。私はその親戚を尊敬しています。だから、私には中国人を排撃したい気持ちは全くありません。中国人だろうと日本人だろうとアメリカ人だろうと、白人だろうと黒人だろうと黄色人種だろうと、人間として、その人権は平等に尊重されるべきだと思っています。 でも、だからこそ「人権を踏みにじる行為」については、それが日本政府だろうと中国政府だろうと、やっぱり、同じ人間として、「悪いもの」は「悪い」と言わなくてはいけないと思うのです。 ~ウイグルの悲惨さ~ 実は、日本の主流メディアは、中国共産党の人権侵害のひどさについて、ほとんど報道しません。アメリカは、中国がウイグルなどの少数民族に対して行った弾圧を「ジェノサイド」と認定しましたが、日本はそれをスルーしています。 ウイグルは本当に悲惨です。私がウイグルの悲惨さを始めて知ったのは、10年ぐらい前のことになります。きっかけは、広島大学の高田純先生のドキュメンタリー映像について知ったのがきっかけです。それは「死のシルクロード」というドキュメンタリーで、中国政府の核実験の実態を明らかにした内容になっています。高田先生は、命がけで、シルクロードに取材にいき、広島の原爆の何百倍もの放射線をあびて病気や奇形児が多発しているウイグルの悲惨な実態について、調査、報道しました。そして、この映像はローリーペック賞という賞を受賞し、世界83カ国で放送されたにもかかわらず、日本の主流メディアは、放送することも報道することもしませんでした。 ~日本の主流メディアが、中国の実態を報道しない理由~ なぜ、日本は、中国共産党の人権侵害について報道しないのか。それについては、実は理由があります。 中国と日本が国交を回復した時、日中の間では、裏側で「日中記者交換協定」というのが結ばれています。この協定により、日本のメディアは、「中国共産党を敵視するような報道は差し控える」という約束をしているんです。だから、中国共産党が「これは駄目」と言うものについては報道できない。報道すると、中国にいる日本人の新聞記者や報道関係者が捕まってしまう可能性があるから。 また、それだけで...

儒家と法家 ①

~始皇帝美化の裏にあるもの~   最近、中国では始皇帝を美化するドラマが作られたといいます。 日本でも 始皇帝を美化する内容の映画「キングダム」が作られ、中国もこの映画の制作にはとても協力的でした。エンターテイメントとしては楽しめる映画だったし「創作」として楽しむ分にはかまわないのですが、反面、言論弾圧を進める中国共産党が、こうした「始皇帝美化」を推し進める背景について、私たちは知っておく必要があると思います。   なぜ、そんなことを言うのか、日中の文化交流は大事なのに、それを批判するのは良くない、と思う人もいるかもしれません。 ただ、世界の情勢はあまりにも今不安定で、日本がいつ悲惨な戦争に巻き込まれるかは、予断を許さないような状況にあります。中国が、台湾や尖閣諸島、沖縄支配を目指している今、今後の日本の将来を担うことになる皆は、中国共産党について、しっかりと知っておく必要があるとおもったからです。 ~教科書の改竄~ そして、なぜ、この「始皇帝美化」の動きに私が警戒するかというと、昨年、国家安全法の施行により、実質的に香港の一国二制度が終わりを迎え、香港では、ものすごい勢いで、今「教科書の改竄」がおこっているという現実があるからです 。 みんなは、「三権分立」という言葉は、小学生の時から知っている言葉でしょう。独裁者の出現を防ぐために、権力を三つに分ける仕組みのことですね。    ところが、この言葉は、昨年、香港の教科書から削除されてしまいました。「天安門事件」「雨傘革命」も消されてしまいました。このように、香港では、去年、歴史の改訂、改竄が進み、教科書が書き換えられ、さらには『聖書』までも書きかえられる、ということまでも おこりました。 ~共通テストに出題された、ジョージオーウェルの「1984年」~ こうした中国共産党の言論統制や監視体制に対して、昨年、アメリカのポンペオ元国務長官は、ジョージオーウェルの「1984年」になぞらえて、批判しました。この本は、近年売り上げが急増しており、それを受けてか、今年の共通テストの世界史でも、「1984年」について、出題されました。この本は、監視社会、全体主義の恐さを書いたディストピア小説です。また、今年の共通テストでは、秦の始皇帝の焚書坑儒や、歴史の改竄についても出題されました。他にも...

酪酸菌で腸内環境を整える

あなかまばばあ日記へようこそ 私は私立中学で現在国語の教師をしています 今コロナパンデミックで世界中が大変なことになっています 私はここ数年、主に高校で、大学受験に向けた古典を教えてきたのですが、 この不安定な時代に、新たな日本を拓く人材を残すために、自分に何ができるかということを 去年、ずっと考えていました 歴史をひもとけば、人類がうまれてから、平和の時代は、永久的に続くことはありませんでした。必ずやどこかで平和の時代は終わりをつげ、戦乱の時代がきます。 そして、国の体制が崩れ、新たな体制へと変化するのですが、 多くの場合、そのきっかけは、疫病や地震、噴火、飢饉、外国からの侵略などでした。 人々は、自然災害や外国からの侵略などに苦しむと、新しい政治体制を求めるようになります。それらの天変地異を「政権への神の祟り」と考えて、新たな神様を祭ったり、遷都したり、政変がおこるなど、国の体制が大きく揺さぶられ、新たな時代が創られる、、こうした繰り返しがおこってきました。 しかし、混乱の時代には、諸子百家のような偉大な思想家がうまれたのも事実です ですから、これからの厳しい時代の中で、この混沌の中から、また諸子百家のような偉大な思想家がたくさん出てくるかもしれない、と私は思っています 私は国語を教えているのですが、大学の専門は倫理だったので、 国語の受験勉強を基調にしながらも、世界の思想家の思想などを紹介しつつ、歴史を俯瞰しつつ、将来のヒントを盛り込めるような話に繋げながら、語っていけたらいいかな、と思っています。 去年、神奈川で異臭騒ぎがありましたが、日本の地殻変動はかなり、今激しくなっていますので、地震も心配です いつ何時、学校が休校になるかわからないので、休校の時の勉強用(前任校での教え子など、浪人生向けの話も含む)として、受験につながる話や、時事問題や、しんどい時の乗り越え方や夢の描き方など、これからの生き方を考える上で何か参考にできるような話を載せていけたらいいな、と思い、このブログを始めました。 ひまな時にはちょっと覗いてみてください さて、今回は一回目ということで、授業でも紹介した小柳津先生の話をのせてみたいと思います 東大の微生物研究者の小柳津広志先生によると、ウイルスに強い身体を作るには腸内環境を整えるのがよいそうです。自分がウイルスに強い身体かどうかを知り...